高血圧
高血圧とは?
年齢を重ねるにつれて気になる「血圧」。でも、高めと言われても特に自覚症状がないからと、ついそのままにしていませんか? 実は、血圧が高い状態が続くと、体の中では少しずつ負担が蓄積されていきます。この記事では、高血圧の基本から原因、症状、治療、そして日常生活でできる予防策までを、わかりやすくご紹介します。
血圧と高血圧の診断基準について
血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際に血管の壁にかかる圧力のことです。血圧の値が基準を超えると「高血圧」と診断されます。
高血圧が続くと、血管が硬く狭くなる「動脈硬化」が進行し、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・脳出血・大動脈解離などの重篤な病気を引き起こす原因になります。また、腎臓の機能が低下する腎障害など、さまざまな臓器にも影響を与えるため、適切な治療や管理が必要です。
血圧は測定する環境や時間帯によって変動するため、『診察室血圧』と『家庭血圧』に分けて考え、高血圧の診断基準も異なります。
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診察室血圧 |
家庭血圧 |
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病院やクリニックで測定する血圧 |
自宅などでリラックスした状態で測定する血圧 |
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緊張やストレスのため高めに出ることがある |
普段の血圧を反映し治療効果の判定にも有用 |
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収縮期血圧140 mmHg以上 または拡張期血圧90 mmHg以上 |
収縮期血圧135 mmHg以上 または拡張期血圧85 mmHg以上 |
高血圧の原因とリスク要因
- 一次性高血圧と二次性高血圧の違い
高血圧は、大きく一次性(本態性)高血圧と二次性高血圧に分類されます。
一次性高血圧: 日本人の高血圧患者の約80~90%を占めます。明確な原因が特定されないものの、遺伝的要因や生活習慣(塩分摂取・運動不足・ストレスなど)、加齢などの影響で発症すると考えられています。
二次性高血圧**: 特定の疾患(睡眠時無呼吸症候群、内分泌疾患、腎臓病など)により血圧が上昇するものです。特に若年で発症した場合や、治療に抵抗性がある場合には二次性高血圧が疑われます。
- 生活習慣が与える影響
食生活や生活習慣の影響も高血圧のリスクを高めます。
- 塩分の多い食事
- 喫煙
- 運動不足
- 肥満
- 睡眠不足やストレス
これらの要因を改善することで、血圧をコントロールしやすくなります。
高血圧の症状と合併症
高血圧に特有の症状とは?
高血圧は初期の段階ではほとんど自覚症状がないため、気づかないうちに進行することが多いです。重度になると、頭痛・肩こり・倦怠感などの症状が現れることがあります。
自覚症状がない場合のリスク
症状がなくても、高血圧の状態が続くと血管が硬くなり、動脈硬化が進行します。これにより、心臓や脳、腎臓などにダメージを与え、突然重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。
高血圧による主な合併症
- 脳: 頭痛、めまい、脳卒中(脳梗塞・脳出血)
- 心臓 動悸、息切れ、心不全、心筋梗塞
- 腎臓: 尿量の低下、むくみ、慢性腎臓病
- 目: 視力低下、高血圧性網膜症
高血圧の治療
治療目標
血圧を適切にコントロールし、動脈硬化や臓器障害の予防を目指します。具体的な目標値は「高血圧治療ガイドライン2019」に基づき、年齢や基礎疾患により分けられます。
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75歳未満の成人 |
<130/80 mmHg |
<125/75 mmHg |
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75歳以上の高齢者 |
<140/90 mmHg |
<135/85 mmHg |
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糖尿病 慢性腎臓病(尿蛋白陽性) 脳血管障害 (両側側頭動脈、脳主幹動脈狭窄なし) 冠動脈疾患 抗血栓薬内服 |
<130/80 mmHg |
<125/75 mmHg |
生活習慣の改善(非薬物療法)
- 食事: 塩分摂取を1日6g未満に抑える。加工食品や外食の塩分量にも注意。
塩分を多く摂ると身体、血管内に多くの水分を取り込むため血圧が上がりやすくなります。
塩分を多く含むハムや練り物、漬物などの加工食品や、ラーメンやうどんなどのスープなどの摂取を控えることも効果的です。
- 運動: ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を1日30分以上、週3回以上行う。
血圧の低下効果のみならず糖尿病や心血管疾患などの予防効果も証明されています。ただし、過度な血圧高値の状態(収縮期180mmHg以上)では、薬物療法等での降圧を行なった後に開始しましょう。
無理のない範囲で10分ずつに分けて行う、階段を使うなど日常生活に取り入れるなどの工夫で継続しましょう。
- 体重管理: BMI25未満を目標に、適正体重を維持。
実際に減量により血圧低下し、最終的には内服薬を中止できる方もいらっしゃいます。適正な体重の指標として身長と体重から計算されるBMIがあり、この値で25未満を目標に過剰なカロリーの摂取を避けるようにしましょう。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは血圧が下がらない場合、降圧薬を使用し、併存疾患に応じて選択されます。
第一選択薬: カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬
背景に心疾患がある方にはβ遮断薬や新しい治療薬であるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)も慢性心不全の方には良い適応となります。
副作用の注意点
各種薬剤には副作用もあり、当院では身体診察や血液検査等で有害事象の有無を確認し忍容性の評価を行います。
カルシウム拮抗薬: むくみ、ほてり
ACE阻害薬: 空咳、腎機能低下
ARB: 腎機能低下
利尿薬: 脱水、電解質異常
β遮断薬: 徐脈、不整脈
高血圧予防のためにできること
血圧チェックを習慣化する
家庭血圧の測定と記録を習慣づけ、季節や体調による変動を把握しましょう。
ストレス管理と睡眠の質向上
ストレスは交感神経を刺激し、血圧を上昇させるため、適度な休息や趣味を取り入れることが重要です。また、睡眠時無呼吸症候群も高血圧の原因となるため、適切な検査と治療を受けることが推奨されます。
このように、高血圧は自覚症状が少ないため、定期的な血圧測定と生活習慣の見直しが予防と管理の鍵となります。適切な治療を続けることで、将来の重大な病気を防ぐことができます。
