メニュー

狭心症

狭心症とは


狭心症の定義と病態

狭心症とは、心臓の筋肉(心筋)に送られる酸素が一時的に不足することで、胸の痛みや圧迫感などの症状を引き起こす疾患です。
主に心臓の血管(冠動脈)の一時的な血流不足が原因であり、心筋梗塞などの重大な病気の前触れとなることもあります。

狭心症は病態や症状の安定性に基づいていくつかのタイプに分類され、適切な診断と治療のためにはそれぞれの違いを理解することが重要です。


狭心症の分類


労作性狭心症(安定狭心症)
階段を上ったり、重いものを持ったりといった身体活動(労作)によって誘発される狭心症です。運動やストレスなどの負荷に応じて胸の痛みが出現し、安静にすると比較的すぐに軽快します。
冠動脈の動脈硬化によって血管が狭くなっていることが主な原因です。

冠攣縮性狭心症


安静時や明け方などに突然胸痛を起こすタイプで、冠動脈が一時的にけいれん(スパズム)を起こすことで血流が途絶え、症状が出ます。
運動とは関係なく発症し、夜間~早朝にかけての発作が多いのが特徴です。

このタイプは日本人に比較的多くみられる傾向があり、西洋人に比べて動脈硬化が少ないにもかかわらず心筋梗塞を起こす方がいる背景の一つとも考えられています。喫煙やストレス、寒冷刺激などが発作の誘因になることがあります。

 

微小循環障害


冠動脈そのものに大きな狭窄は見られないにもかかわらず、心筋の細かい血管(微小血管)の機能不全により血流が障害される病態です。
特に女性に多く、運動時の胸部症状があるのに検査で異常が見つからないケースでは、この病態が疑われます。診断と治療が難しいタイプの一つです。

不安定狭心症


これまでに比べて軽い負荷で発症したり、安静時にも胸痛が出現するようになった状態です。
狭心症としての症状が変化・悪化してきている段階であり、急性心筋梗塞の前段階ともいえる緊急性の高い状態です。迅速な医療介入が必要です。


狭心症の主な症状


胸痛・胸の圧迫感
狭心症の代表的な症状は「胸の中央が締めつけられるような痛み」や「押しつぶされるような圧迫感」です。
痛みは数分間持続し、左肩・首・あご・腕などに放散することもあります。

呼吸困難・冷や汗・動悸
発作時には息切れ、冷や汗、吐き気、動悸などを伴うこともあります。これらは心筋が一時的に酸素不足になることで、全身に影響が出ているサインです。

症状が出にくいケース(無症候性狭心症)
高齢者や糖尿病のある方では、自覚症状が乏しいこともあります(無症候性狭心症)。
こうしたケースでは、検査で偶然見つかることもあり、定期的な循環器検診が非常に重要です。


狭心症の原因とリスク要因

  • 脂質異常症・高血圧・糖尿病
    血液中のLDL(悪玉)コレステロールの増加や、高血圧、糖尿病といった生活習慣病は、動脈硬化を進行させる大きな要因です。
  • 喫煙・ストレス・遺伝的要素
    喫煙は血管を収縮させ、冠攣縮を引き起こすリスクがあります。また、過度なストレスや家族歴も発症リスクを高めるため注意が必要です。


狭心症の診断と検査方法


問診と診察:診断の第一歩
医師による詳細な問診が最も重要な診断手段の一つです。発作のタイミング、持続時間、誘因、緩和因子などを正確に伝えることが、狭心症の種類を見極めるカギになります。

主な検査の種類

  • 心電図検査
    発作時やその前後で異常波形が出現することがあり、基本的なスクリーニング検査です。

 

  • 運動負荷試験
    運動中の心電図や症状を観察することで、労作性狭心症を評価します。

 

  • 心臓超音波検査(心エコー)
    心筋の動きや収縮力、弁の状態などをリアルタイムで観察でき、心不全や他の心疾患との鑑別に有効です。

 

  • 冠動脈CT検査
    造影剤を用いたCTにより、冠動脈の狭窄の有無を非侵襲的に評価できます。

 

  • カテーテル検査(冠動脈造影・負荷検査・血管機能評価)
    狭心症の診断において最も精度の高い検査であり、カテーテルを血管内に挿入して冠動脈に造影剤を注入し、血管の狭窄や閉塞の有無を直接確認します。

    また、薬剤を用いた誘発検査(エルゴノビン負荷やアセチルコリン負荷など)を併用することで、冠攣縮性狭心症の診断が可能です。
    一見正常に見える冠動脈でも血管のけいれんや機能異常を明らかにすることができます。

    さらに、血管内皮機能の評価や微小血管障害の有無を調べる特殊な圧測定(FFRやCFR)も行うことで、より詳しい病態の把握が可能です。

    これらの詳細な評価によって、患者さんごとの病態に応じた的確な治療方針の決定につながります


狭心症の治療法

症状の分析に基づいた個別対応が重要
狭心症の治療は、まず詳細な問診と病態の分析を丁寧に行うことが極めて重要です。病態によって治療法が大きく異なるため、患者さんごとの状態に応じた対応が求められます。

  • 薬物療法
    硝酸薬・カルシウム拮抗薬・β遮断薬など
    血管を拡張したり、心拍数を抑えたりする薬剤により、心臓の負担を軽減し、症状を抑えることが可能です。

    冠攣縮型の場合には、冠動脈のけいれんを防ぐカルシウム拮抗薬が第一選択となります。

  • 血管形成術・バイパス手術
    経皮的冠動脈形成術(PCI)
    カテーテルを用いて狭窄部位をバルーンで広げ、ステントを留置する方法です。多くの場合、短期入院で治療が可能です。

          冠動脈バイパス術(CABG)
         重度の狭窄や複数の病変がある場合に行われる外科的治療法で、新たな血流ルートを作ることで心筋への酸素供給を改善します。


狭心症の予防と再発防止

  • 生活習慣の改善
    禁煙・適度な運動・バランスの良い食事など、日常生活の見直しが重要です。特に脂質異常や糖尿病がある場合は、医師の指導のもとでコントロールを行いましょう。
  • 定期的な診察と検査

          再発防止には定期的な血液検査や心機能の評価が重要です。症状がなくても、リスク因子のある方は循環器内科の受診をおすすめします。


医療機関を受診するタイミング


以下のような場合は、すぐにご相談を
胸の痛みや圧迫感が繰り返し起こる
安静にしていても痛みが出る
息切れ、冷や汗、動悸などを伴う
過去に心疾患の既往がある
症状が軽くても、放置することで心筋梗塞に至る可能性があります。早期の診断と治療が何よりも大切です。

胸の症状が気になる方は、早めの受診をおすすめします
胸の違和感や圧迫感、「これって狭心症かも…?」と感じる症状がある場合は、我慢せず一度ご相談ください。
当院では、丁寧な問診と各種検査を通じて、一人ひとりに最適な診断と治療方針をご提案いたします。

放置してしまうと心筋梗塞などの重篤な疾患に進行するリスクもあるため、少しでも不安があれば早めの受診をご検討ください。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME